インタビューの前半では・・・
回数縛りを設けなくても、CRMをしっかりやっていれば購入率が低下することはないこと、回数縛りの問題点は企業と消費者の間にズレが生じていたことを学びました。また、CRMに取り組む上で、MAで顧客の状態に合わせた対応を自動で行うことが重要になってくることがわかりました。
目次
上位顧客には1体1対応で関係性を深める
大塚 今後はMAを取り入れたCRMが重要となると、CRM周りで最新のテクノロジーを使っていくことはこれまで以上に重要になりそうですね。
工藤 両方必要かなと思います。クリック&モルタウという言葉がありますけど、システム的な要素と人の要素、アナログの部分のバランスが大事かなと思います。
大塚 それで言うと、アナログの方で今年取り組まれたことはありますか?
工藤 そうですね。定性データの集約が手付かずの企業様が多かったので、その辺りをone to oneマーケティングに寄せた仕組みを作りたいなと思って、コンタクトセンターを作らせていただきましたね。電話でもメールでもお客様とダイレクトに関係を作れる、お客様一人に対して、担当者を一人設計して、目指しているのはEC版の三越の外商みたいな感じですね。
大塚 担当を配置するんですね。
工藤 はい、お客様に気持ちよくお買い物をしていただくという観点で顧客担当という仕組みを作って、コンタクトセンターと絡めながら顧客管理をしていくという仕組みを作らせていただきました。
大塚 面白いですね。
工藤 結構それが面白い結果になっていて、LTVが2倍3倍になってきているんです。
大塚 そんなにですか!?
工藤 今まで定期の残存率が10%ほどだった企業様が40%になったりもしてますので、その仕組みでできているので、個人的にはまだまだいけると思います。
大塚 へぇ〜!それはすごいですね。
工藤 全部のケースで導入するのではなく、お客様の状態に合わせて戦略的に入れていく必要はありますけどね。
大塚 全てにone to oneをやるのではなく、お客様によって戦略が必要なんですね。
工藤 今の百貨店もそうだと思うのですが、全てのお客様に担当はつかないじゃないですか。私も外商を体験したのですが…
大塚 さすが〜(笑)
工藤 あれもやっぱりステータスの上の方にしかつかないんですよ。
大塚 結構買ったんですね(笑)
工藤 それは。。あの〜まぁ(笑)。そうすると全然知らない世界があって。話逸れますが、百貨店の中にステータス上の人だけしか入れないラウンジがあったりとか。飲み食いがタダで。買い物しても荷物持たなくて良かったりとか。
大塚 いいですね〜。
工藤 車まで持って行ってくれるとか。そうすると「買い物するならここで。」となるんですね。どうせ化粧品買うなら、サプリメント買うなら、洋服買うなら、なんでもいいんですけど、そういったロイヤリティの仕組みを事業者側でも作っていけると、one to oneの面白さがなおあるかなと思いますね。
大塚 MAを使いながらお客様に合わせて、ある程度仕組みで応対しながら、ロイヤリティを高めていってお客様にone to oneで感化していくという。
工藤 全てのお客様には限界がありますので、セグメントを取り入れた上位のお客様におすすめしていますけど。ただ先ほど言った休眠状態でも元ロイヤルの方もいらっしゃいますので、そこもやられた方が良いかなと思います。かなりの確率の活性化があります。かなりの確率の。
大塚 強調するくらい?
工藤 はい。競合他社もそこに対しては手厚くフォローしているわけではないので、やられた方が良いかなと。
大塚 でいうと、業界全体的にまだまだ既存顧客へのフォローができていないので、今から対策すると結構なアドバンテージですよね。
工藤 そうですね。我々が通常の買い物でパターンが決まってくるように、おそらくECでもパターンが決まってきますよね。
ネックになる情報管理にどう対処するか?
大塚 そこで定性が重要になってくるんですね。そうなるとone to oneでやりたいという企業さんも出てくると思うのですが、皆さんがネックになるのはどういった点でしょう?
工藤 顧客情報の管理がしきれてない点ですね。顧客情報を売り上げでしか把握してないので。それ以外の情報を管理しきれていません。LINEなどで得た情報を使用してどうやってセグメントしていくかというところが課題ですね。
大塚 例えばどんな情報ですか?
工藤 基本的には顧客情報と言われる、氏名・住所・連絡先・商品売り上げデータと、そこに紐づく「お客様が普段何を買っているのか」「どんな悩みがあるのか」といった情報があります。それらを紐づけて管理してセグメントすることでお客様のニーズが見えてきます。多くの会社さんに、情報を持っていても管理できていない。という共通の課題があると思います。
大塚 ちなみに企業さんはそういった情報をどうやって聞いておられるのですか?
工藤 LINEだとアンケートが多いですね。コールセンターでも直の会話から取れます。そうやって情報を取っているのに管理しきれないともったいないですね。情報は宝の山ですから。
大塚 皆さん情報の管理の方法がイマイチわかってないんですかね…
LINEとか電話みたいに相互のやりとりにスピード感があるものが今後は使いやすいですかね。
工藤 もちろんメールもまだまだ活用領域はあると思いますが、そのバランスは年々変わってきていると思います。
大塚 CRMも変化が面白そうですね。
工藤 はい、来年もまた変化が加速しそうですね。
価格市場から品質市場へ
大塚 工藤さんはCRMもそうですが、商品のプロフェッショナルでもあるので、商品に関しても伺いたいのですが、2017年の商品に関する大きなトピックスはありますか?
工藤 新たな市場の動きはなかったですが、全体的に、より品質市場になっていると思います。消費者は価格ありきの品質よりも、より良いものを求める傾向にあると思います。お客様も化粧品やサプリメントをECで買うことが日常になってきておりますので、使った時の実感やテクスチャへのこだわりが年々高まってきています。CRMもそうなのですが、継続してもらうには商品を気に入ってもらうのが大前提です。お客様からすると気に入らない商品を1年続けて買うのはしんどいですよね?
そういった意味では商品の質の重要性が上がってきていて、価格至上主義から品質至上主義に変わってきつつあると思います。機能性表示食品とかも注目されていますが、お客様も機能性表示食品の表記があると安心してお買い物ができる。という背景もあると思います。広告も含めて機能性表示食品のPRはもっと増えていくと思います。
機能性表示食品とは?
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品のこと。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報を消費者庁長官へ届け出ることが必要。
大塚 今年の秋くらいに薬機法や景品表示法への指摘がありましたけど、機能性表示食品はどうですか?大手さんは届け出をしてらっしゃると思いますが、中小ベンチャーも届け出をしようという動きはありますか?
工藤 事業者側の認識の仕方によりますね。お客様でも、機能性表示食品に詳しくない方は、表記を見ても普通のサプリメントの違いはわからないですよね?ですから事業者側の動きも、今後一般のお客様が機能性表示食品をどう認知していくかによると思います。そもそも良い商品を作る上では別に機能性表示食品として届け出るかは関係ないんです。広告の表記のやりやすさ等は変わるかもしれませんが、現時点では特にどうしてもやらなければいけないとは考えていないです。ただ、今後スメディアの情報発信の仕方によってお客様の認識が「機能性表示食品でないといやだ」というのが常識になるかもしれませんね。
大塚 品質の向上面では、どういったことに取り組んでいけば良いですか?
工藤 個人的にはスーパーフードを仕掛けたいと考えています。次世代型の青汁とか仕掛けたいですね。実はまだ世間に認知されてなくて、良い成分は山ほどあるんです。それらをマーケティング側で情報発信をすることで、市場はまだまだ広がると思います。
大塚 1年くらい前は、「こういった成分の商品が売れてます。」とかありましたもんね。
工藤 そういった意味では今期は成長期の市場が成熟した印象がありますね。急成長する会社がいくつかあって、そこにどんどん他が追随する。広告表記のこともあり、結果市場がすぐに成熟して鈍化してしまうといった1年でしたね。参画企業が多くなったので、「市場を守る」と言うと大げさかもしれませんが、変な商品は作りたくないですよね。
大塚 工藤さんは品質を保つことは昔からおっしゃってますもんね。品質を上げざるを得ない状態になっているのは通販業界にとっても、良い気はしますね。
工藤社長が予測する2018年の通販業界
工藤 今期は物流のあり方も見直すきっかけなったとも思います。
大塚 そうですね、やはり商品が最終的にお客様に届くのは物流ですので、そこにコストをかけてでもお客様に満足してもらいたいという会社さんも出てきてます。
工藤 物流も含めてお客様への提供プロセスなので、自分自身も物流について考えることが多かったですね。
大塚 それは書くことがいっぱいありすぎるので別で特集します(笑)
最後に2018年、こんな年になるといいなというのはありますか?
工藤 本当の意味でのCRMの元年になると思います。各企業CRMを取り入れる準備をしていますので、ヨーイドンでCRMを構築するのが来年の1年になると思います。フォロー周りや、アフターケアのあり方がより熱くなるのではないかなと思います。商品的な面では機能性表示食品へのバージョンアップがあると思います。
大塚 ようやくCRMも浸透してきましたね。
工藤 CRMのマインドが高まって、部署を置くなど本気で取り組む企業さんが増えてきているので、来年はヨーイドンで走り出すことになると思います。
大塚 企業さんの中で少しずつCRMの成果が出てきていますので、そこで大きく成果が出ると、みんな一斉に取り組みそうですね。
工藤 そうですね。成果が出ていることがCRMに本格的に取り組む原動力になっていると思います。
大塚 わかりました。ありがとうございます。本日は2017年のCRM商品のキーワード、大手からベンチャーまで工藤さんの視点から2018年のトレンドの予測について語っていただきました。どうもありがとうございました。
工藤 ありがとうございました。
【 2018年予測】本当の意味で2018年はCRM元年になる
総括: MAを使いながらセグメントを取り入れた上位のお客様に合わせて、ある程度の仕組みで対応しながら、ロイヤリティを高めたうえで1対1の戦略の重要性が分かりました。
また、商品に関しても価格市場から品質市場へと変わり、通販業界全体を見ても品質を保つのではなく上げることの重要性も分かりました。
2018年は本当の意味でCRM元年となりそうです。